「嵐の中の母子像」のこと

以前、広島に行った時に色んな美術館にも行き、歴史建築にも触れたのですが1番感銘を受けたのがこの彫刻でした。

 

まさか彫刻を見てこんなに泣くとは思わなかった。

平和記念公園の入り口に設置してあるという場所柄もあるとは思うんですが・・・

 

いつもは具体的な意味を持つ具象作品よりもいろんな想像を楽しめる抽象作品のほうが好みなんですが、今回は写実作品の持つ力をまざまざと感じました。

 

右手に乳飲み子を抱いて、最初の写真では分かりづらいのですが公園に対して右側に回ると、このようにもう一人の子供を今、左手で背中に負ぶさせようとしている母親の姿を写し取った作品です。

 

これから2つの命を抱えた状態で立ち上がろうとしています。

 

この作品が聖母子像のようだとの評価もありますが、一般の聖母子像のように満ち足りた安らぎはここには無く、むしろここで離れてしまったら二度ともう会えなくなるかもしれないという切迫した緊張感があります。

 

本郷新さんという札幌出身の方の作品だそうです。

 

この作品には原爆そのものや被爆した方々の姿は写し取られておらず、ただ苦難の中にいる親子の姿が写実に描かれているだけです。

原爆を想起させるものはこの作品には直接描かれていません。

 

もし自分が彫刻家で、もしこの場所の作品を委嘱されて、もしこのモチーフが頭に浮かんだら、三日間くらい頭が熱を持って寝られなかったんじゃないだろうか?

一気呵成に・・・・とは天才が作品を創造した後によく聞かれる話ではあるのですが、感情の向くままに頭に熱を抱えた状態でこの作品に向かってしまったら、一種、冷徹なこの視線の作品は生まれなかったのではないかと想像します。

 

タイトルにある「嵐」とは苦難の象徴なのでしょう。

 

札幌にある彫刻美術館に石膏の雛形が展示されているとのこと。

次の旅は札幌ですね。